お金と自分の関係をもっと自由に——25歳起業家が「Payme」で描く未来とは

後藤道輝さん

ペイミー社長の後藤道輝さん。1992年生まれ。慶應義塾大学卒業。East Ventures、メルカリ、CAMPFIREを経て、DeNAに中途入社。DeNA戦略投資推進室での勤務を経て、2017年7月にペイミーを設立。「お金に縛られず、若者たちがもっと自由に挑戦できる世界をつくりたい」という思いから、給料即日払いサービスアプリ「Payme」をリリース。

既存の金融機関は、“お金持ちをもっとお金持ちにすること”に特化しています。僕らが目指しているのは、“将来お金持ちになりうる人の健全な消費活動、資産形成に貢献すること”。

今、20代で貯蓄していない人は60%以上、独身の2人に1人が貯蓄していない時代です。その原因の一つに、50年以上も変わっていない、給与の「月末締め、翌月末払い」制度があると考えています。

自分自身、学生時代にアルバイトを始めたとき、4月は研修、5月に本採用、6月25日にやっと最初の給料日が来て、働いているのになかなかお金が入らず辛かった経験がありました。この制度に疑問を感じ、2017年11月に立ち上げたのが給与即日払いサービス「Payme(ペイミー)」です。

イーロン・マスクになれば世の中を変えられる

プレゼンをする後藤さん。

仕事をする上で影響を受けた人物を聞くと、「East Venturesの松山大河さんと、CAMPFIREの家入一真さん。チームビルディングなどの指針になっています」。

そもそも僕は、大学で開発経済を専攻していました。ボランティアとしてカンボジアで井戸を作ったり、インターンとしてインドネシアの工場で働いた経験もあります。しかし、そうした国々が経済的に発展していく姿を目の当たりにしてある考えが浮かびました。このままどこかに就職して開発経済に関わっていくより、イーロン・マスクになったほうが世の中を変えられるのではないか、と。

そこで起業家もしくは投資家を目指そうと思いました。2015年、日本のほか東南アジアやアメリカに拠点を持つベンチャーキャピタルEast Venturesに入社。

その後、East Venturesの投資先であるメルカリのマーケティングチームで半年、CAMPFIREに半年、DeNAに丸1年いて鍛えられました。一貫しているのは、「人に役立つものを作って、自分の存在証明をしたい」という強い思いです。


「じゃあ自分でやったら?」の一言で起業

アジアの子どもたち

アジアの貧困を目の当たりにしたことが原体験にある。「目指すのはグラミン銀行です」と後藤さん。

とはいえ、自分が起業するつもりはなかったんです。BOPビジネスや日本の貧困問題に関心のある若い起業家がいれば出資したい。そのためのベンチャーキャピタルを作るつもりでした。給料即日払いが実現すれば、マイクロファイナンスとしての意義があるし、企業においては福利厚生の役割を果たすはずだ、と。

そこで、あらゆるエンジェル投資家にメールをして、「話を聞いてほしい」とお願いしました。その中で赤坂優さんが会ってくれて、「ベンチャーキャピタルを作りたい」「給料前払いサービスに投資したい」とプレゼンしたところ、「後藤くんが給料前払いサービスを作るなら投資するよ」と返答があり、自分の考えを改めました。

アイデアはあるけれどお金のないベンチャーに投資するのも、免許合宿に行くのに3万円足りない人に即日払いするのも、本質的には同じだと気付いたんです。それならば、自分で会社を立ち上げよう。そう思うのに時間はかかりませんでした。

定着率2倍!良い人材の確保につながる

応募数と離職率のグラフ

Payme提供

もともとPaymeは、給与の即日払いを希望する従業員のニーズに応えるために立ち上げたものです。しかし、営業しているうちに企業側も苦労していることに気付きました。例えば「もうやんカレー」さんでは、外国人や学生のアルバイトから給料前払いのニーズが以前からあったそうです。

申請があるごとに給与を計算して手渡しており、事務処理が煩雑になっていました。そこでPaymeを導入していただいたのですが、「Paymeを導入したことで手間が減って楽になった。よりカレー作りに集中できる」という声をいただいています。

それ以外にも、企業側が抱えている悩みはあります。それが人材確保。売り手市場の今、初月で止めてしまうアルバイトも多数いるそうです。自分で働いてその対価をもらうことに実感を持てないのかもしれません。そういう人たちに必要なのは、小さな成功体験を積み重ねることです。

Paymeを導入すると、スマホアプリから自分で稼いだ金額を確認でき、小さな成功体験を得られる。それが結果としてモチベーション維持につながり、初月の退職を防ぐことができます。

求人応募数を上げることにも一役買っています。大手アルバイト情報サイトによると、求職者の検索キーワードでトップに来るのは「日払い」が圧倒的だそうです。Paymeを導入すれば、簡単に日払い対応が可能になります。しかも導入費用や月額費用はかかりません。企業側は無料で人材確保のための対策ができるわけです。

会社を大きくするより、血を濃くしていきたい

後藤さん

趣味はブレイクダンス。大学時代から慶応SFCのサークルで活動してきた。

2017年7月7日に会社を登記した段階で、正社員は僕一人でした。同月下旬には、CAMPFIRE時代の元上司で金融に詳しいインフラエンジニアが参画。翌8月には、インターン2人を採用して、今その1人は取締役です。

従業員を増やして会社を大きくするつもりはありません。仮に増やすとしても、エンジニアとカスタマーサクセス部門くらいでしょうか。15人くらいまでであればいいかもしれないけれど、30人になると意見が割れるなどしんどいことが増えてくる。

一番恐れているのは、僕が裸の王様になって、社内が自由に意見を言いにくい空気になってしまうこと。人数を増やすよりも、血を濃くしていきたいと思っています。

今後は、既存のインフラサービスと合流することによって、社会的に価値のあるものを生み出していきたい。例えば、フィンテック領域においては、プチ退職金制度を作りたいと思っています。

仮に現状のサービス利用料500円の一部をロボアドバイザーなどで運用し、1年間勤務すると退職時に元本+運用益がもらえたら、企業側は従業員の定着に役立ちますし、若年層の貯蓄の成功体験にもなるでしょう。

将来価値は高いけれど現在価値は低い人たちが、「お金が足りないから」と言って何かを諦めることがないように支援していきたい。その第一歩として、お金を言い訳にしない社会をPaymeというサービスで作っていきたいのです。

Paymeとは:前払いによる給料の自由化を目指すサービス。2017年にローンチ。「自分とお金の関係を、仕事と人生の関係を、もっと自由にデザインできる未来」を目指す。

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