[ BUSINESS INSIDER JAPAN Special Feature ]

Toward 2050 変革のカタリストたちの挑戦

「事業の原点に立ち返る」デロイト トーマツCEOが語る、企業のあるべき姿への責任と決意

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「人とひとの相互の共感と信頼に基づく『Well-being(ウェルビーイング)社会』」の構築を目指す──。デロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)が2021年3月11日に掲げたAspirational Goal(目指すべき社会の姿)だ。

デロイト トーマツは1968年に日本初の全国規模の監査法人として誕生した、監査やコンサルティングのプロフェッショナル集団。なぜいまこのような構想を打ち出したのか。永田 高士CEOにその狙いや経済社会に対する決意を聞いた。

コロナ禍の社会変容が導いた「新たなアプローチ」

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永田 高士(ながた・たかし)氏/デロイト トーマツ グループ CEO。1995年監査法人トーマツ(現・有限責任監査法人トーマツ)入社後、監査、M&A・事業再生などのコーポレートファイナンスや、コーポレートガバナンス、リスクマネジメントなどに従事。デロイトトーマツ グループ ボード議長、グローバルのデロイト トウシュ トーマツ リミテッドのボードメンバーを歴任し、2018年6月より現職。

── プロフェッショナル集団がなぜ「Well-being社会」の構築をゴールとして設定したのか、背景を教えてください。

約3年前にグループCEOに就任したとき、当グループの目指す姿として「経済社会の変革のカタリスト」を掲げました。私たちは会計士、コンサルタント、税理士、弁護士、そしてデータサイエンティストやエンジニアなどを含む約1万5000人のプロフェッショナルを擁する集団です。この多様な人材が個々の専門領域を越えて互いに連携し合うことで、日本企業や社会システムに大胆な変革を促すカタリスト(触媒)でありたい、と活動を続けてきました。

さまざまなビジネスを通じて変革を支援する取り組みを進めていましたが、「より広く社会への価値を発揮するには、新たなアプローチも必要ではないか」と活動の進化を考えていた矢先に起きたのが、COVID-19による社会変容でした。

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Shutterstock / StreetVJ

この社会変容は、不可逆的なものとしてさらに規模と速度を増して進んでいくことが予想されます。

昨年来、COVID-19の感染拡大の危機に加え、気候変動が社会に及ぼす影響に注目が集まり、プラネタリーバウンダリー(地球上で人間が安全に生存できる限界)の認識が広がりました。加えて、これまでの経済一辺倒の成長モデルから、社会価値と経済価値を両立させた新たな持続的成長のあり方が希求されるようになってきています。

こういった中で、クライアントを含む社会や当グループのメンバーがデロイト トーマツに期待すること、求めることも大きく変わってきたと感じています。

また、私たちプロフェッショナルはビジネスパーソンとしての側面だけでなく、地域社会で暮らす生活者の面があります。そういったメンバーとともに直接的に社会課題に向き合ったり価値を創造したりすることと、クライアントや社会からの期待に応えることを同じ次元で捉えることで、この先の道筋が見えてくるものと思いました。

そうして「人」が資産であり価値を生むプロフェッショナルグループとして、“精神的な豊かさを含めた個人の幸せ”を起点として、社会や地球環境全体を包含するWell-being社会を実現したいという構想が生まれました。

── Well-being社会を3つのレベルで実現していくとのことですが、それはどういった意味でしょうか。

一人ひとりを起点とする「個人レベル」の豊かさを見直し追求しながら、私たちが所属する地域コミュニティの集合体である「社会レベル」の質的な向上を目指す。そして全ての基盤となる「地球環境レベル」の持続可能性を追求していく、という考え方がベースにあります。

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デロイト トーマツ提供資料をもとに編集部作成

特に着目いただきたい点は、これらの3つのWell-beingが、その図柄(上図)が表すようにトレードオフではなくトレードオンの関係にあることです。つまり、個人・社会・地球環境の3つのレベルで同時に高めていく必要があることを示しているのです。

また、Well-being社会は、その起点となる人々の主体的な関与が原動力であり、人とひととの相互の信頼と共感がベースにあることで初めて構築できるものと考えています。

── 発表は2021年3月11日。東日本大震災から10年の節目の日でしたが、どのような思いがありましたか。

東日本大震災では、デロイト トーマツの多くのプロフェッショナルたちが自ら手をあげ、復興支援に取り組みました。そこで培ったノウハウや経験、皆さんと共有した汗や涙をWell-being社会の構築にも活かしたいと考え、この日に発表しました。

震災で地域経済は壊滅的になりました。厳しい状況に置かれた経営者の方も多く、立て直しは容易ではありませんでした。そこで我々は被災した3県(岩手・宮城・福島)に事務所を有するグループに与えられた社会的使命として、次世代経営者育成のための経営道場でメンターの役割を継続的に担ったり、地域に根差した強い会社をつくるための企業再編のお手伝いをしたりしてきました。

そのたびにメンバーは地域の方々と膝を突き合わせて対話しながら、専門的な知見や経験を社会貢献や社会課題解決に役立ててきました。 この復興支援活動を通じた経験は何事にも代えがたく、新たな社会環境への移行においては人の果たす役割が大事で、同時に誰も取り残さない(Leave no one behind)ことが重要であることに気づかせてくれました。

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東日本大震災の直後から、イノベーションを加えた「震災新興」を目指してグループ内のメンバーが主体的に活動を続けてきた。写真は、宮城県気仙沼の4社の造船会社が合併して新しい造船団地に移る「みらい造船」プロジェクト。(写真をクリックすると詳細のリンク先にとびます)

提供:デロイト トーマツ

コロナ禍の若手ヒアリングから分かったこと

── Well-being社会の構想には、グループ内の若手メンバーの声も積極的に取り入れたと聞いています。

社内全員にアンケートを実施するとともに、経営幹部とのオンラインミーティングに若手メンバーにも参加してもらい話を聞きました。そこで再認識したのは、多くのメンバーが目の前のプロジェクトだけでなく、社会全体に貢献できる活動をしたいと考えていたことです。

現場の若手から「こんなことをやってみたい」「こうしたらどうか」とアイデアがどんどん出てきて、我々ももっとフラットに意見を聞いてそれを即座に反映できる経営組織でありたいと改めて感じました。

── 一人ひとりの「主体的な関与」が重要とのことですが、どのように推進していきますか。

Well-being社会は個々人が主体的に関与することが原動力になります。そのためにはデロイト トーマツのメンバー 一人ひとりの個人的な行動とビジネスでの行動が一致していくことが大切だと考えています。

なかでも、気候変動に代表される地球環境問題は、Well-being社会を実現するための大前提として克服すべき根本的な課題です。私は、その解決に向けてメンバー一人ひとりの個人としての関与を呼びかけると共に、ビジネスを通じてクライアントも巻き込みながら、より大きなインパクトを実現するべく自ら先頭に立って旗振りをしています。

例えば、2020年末から始動したCEOイニシアチブ(Climate Sustainability イニシアチブ)では、その開始時から、気候変動のアジェンダに知見を持つメンバーが率先して専門性を発揮し、カーボンニュートラルへの社会変革を推進する活動を行っています。

今後はこれに加えて、全メンバーがあらゆるクライアントとの接点において気候変動の課題に目を向け、積極的に課題解決を提案していくことを推奨していきます。

さらに、クライアントのみならず、アライアンスパートナー、NGO・NPO、業界団体、サプライヤーなどとも協力し、気候変動に対して、社会システムや業務プロセス全体での取り組みを進めていきます。なぜならば気候変動によりもたらされる課題は莫大であり、同じ志を抱く組織や個人の協力による共同のアクションが求められているからです。

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── 最後に、自社の事業活動におけるCO2排出削減の取り組みもお聞かせください。

デロイト トーマツ グループ自体も、2030年までにCO2排出量実質ゼロ(ネットゼロカーボンエミッション)を達成することを目指しています。私たちの事業活動に伴うCO2の排出は、プロフェッショナルサービスの業務特性から、オフィスにおけるエネルギーの使用とメンバーの出張時の飛行機利用に由来するものが大きな割合を占めています。これらはCOVID-19の影響で減少傾向にありますが、今後も手綱を緩めることなく削減を進めていきます。

また、個々のメンバーの日常的な消費、使用、購入などの意思決定が気候変動に影響することを情報提供し、率先してCO2排出の削減を促すことで、家庭や職場において責任ある選択ができるように支援していきます。

歴史の大きな転換点にCEOを担った私の役割として、次世代がWell-being社会を目指し、率先してより活力のある質の高い未来を築くための環境づくりをこれからも加速させていきます。


デロイト トーマツが掲げた『人とひとの相互の共感と信頼に基づく「Well-being社会」』の構想について、詳しくはこちら

2050年カーボンニュートラルに向けたCEO直轄の「Climate Sustainabilityイニシアチブ」について、詳しくはこちら

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デロイト トーマツと考える、「誰一人取り残さない」と「2050年カーボンニュートラル」両立のカギ

「2050年カーボンニュートラル」。この実現には社会全体の大きな変革が必要ですが、進め方によっては企業や労働者が痛みを負いかねません。望ましい移行の道筋とはどのようなものか、デロイト トーマツ グループの山田太雲氏とNPO法人気候ネットワーク理事の平田仁子氏が話し合いました。

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