ヨーロッパで「知らない人はいない」グローバルコンサルファーム。躍進の裏にあるリーダーの哲学

1967年にフランスで設立されたグローバルコンサルファーム、キャップジェミニ。

30万人以上の従業員を擁し、ヨーロッパ、アメリカやアジア・パシフィックを中心に50カ国以上でビジネスを展開、2020年の売り上げは160億ユーロ(約2兆1千億円)に達するという欧州最大規模のファームだ。

その日本法人、キャップジェミニ・ジャパンが躍進を続けている。

グローバルでの知見を生かしたテクノロジーコンサルティングからソリューションの提供まで、シームレスなサービスが評価され、右肩上がりの成長を続けてきた。今後の拡大のために講じる戦略と見据える未来について、執行役員社長の保積弘康氏に話を聞いた。

設立8年目、成長フェーズ。他コンサルファームとの違いは?

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キャップジェミニ・ジャパン執行役員社長の保積弘康(ほづみ・ひろやす)氏。グローバル企業にて多岐にわたるテクノロジー、事業開発、運営、財務事業などを主導。2014年キャップジェミニに入社。キャップジェミニ・ジャパンの金融サービス部門グローバルアカウントヘッド、最高営業責任者(CSO)および最高執行責任者(COO)を歴任し、2021年4月より現職。

2013年に設立されたキャップジェミニ・ジャパン。自らを成長フェーズと位置付けるが、その顧客には大手銀行や自動車メーカーなど、グローバルな大企業が並ぶ。

2021年4月から日本法人を率いる保積氏は、自社のポジショニングや狙いをこのように語る。

「国内市場が縮小する中、大手企業はグローバル市場に軸足を移しつつあります。そのために必要なのが、ビジネスを遂行するためのプロセス、人材、テクノロジーなどの枠組み。つまりグローバルオペレーティングモデルの再構築です。

現状、多くの日本企業は国内でのビジネスを念頭に置いたシステムを採用しています。このままではグローバル競争で勝つことは難しく、さまざまな国や地域にも柔軟に対応できるグローバルオペレーティングモデルが必要です。世界50カ国以上でビジネスソリューションを提供する我々なら、そのお手伝いができます」(保積氏)

キャップジェミニ・ジャパンが主に手掛けるのは、最新のITを活用し、事業や業務本来の目的に沿って既存の制度や体制を抜本的に見直し再構築する、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)だ。構想策定から始まりERP(エンタープライズ・リソース・プランニング:統合基幹業務システム)ソフトの検討や導入、アプリ・インフラ周辺のテクノロジーサービス、アウトソーシングまで一気通貫で提供する。

「アプリやシステムを導入するだけなら、新興国のベンダーやSIer(システムインテグレーター)の方がコストを抑えられるかもしれません。また、構想だけなら戦略コンサルに任せればいい。私たちに求められるのは、グローバルに対応できるコアとなるソリューションを構想から実装までEnd to Endで構築することです」(保積氏)

重要なのは「失敗からの学び」

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キャップジェミニはグローバルで、世界規模の大手消費財企業30社のうち27社、自動車部品メーカートップ15社のうち12社を支援するなど、幅広い業界でトップクラスのクライアントを持つ。その知見をいかんなく活用できるのもキャップジェミニ・ジャパンの強みだ。

自身も複数の外資系企業で経営に携わってきた保積氏は、従来の日本企業の弱点をこう指摘する。

「これまで日本企業の多くは、パートナーが手組み(独自に構築)した業務システムを導入していました。しかしグローバルでは、SAP(ドイツに本社を置くSAP社が提供する基幹業務プラットフォーム)やSalesforceといったパッケージ・ソフトが主流となっています。

これらの導入により、日本企業も本来ならばグローバルスタンダードの業務システムが構築されるはずでした。

しかしこれまで手組みした業務システムを使っていたことから、事業部が強いカスタマイズ要望を出してくることが多く、日系ベンダーや日本に長くいる外資系ベンダーは、それに対応するのが当たり前になり結局は大幅にカスタマイズされた独自仕様の業務システムになってしまいました。

その結果、グローバルでは通用しない、アップグレードや保守も納品したベンダーしかできない俗に言う『ベンダーロック』が発生。多額のコストがかかる弊害も生まれているのです」(保積氏)

キャップジェミニは、この「非効率を生む過度なカスタマイズを行わない」のが特徴だ。とある損害保険会社のプロジェクトでは、同社内のネットワークであるインドや中国の拠点と連携しつつ、カスタマイズせずにERPソフトを導入してプロセス改革を成功させた。

その功績が評価され、同社は親会社である大手損保の全社DXの計画・実行プロジェクトも担うことに。保積氏は「日本企業がグローバル展開を目指す今、こういったケースは増える」と予測する。

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Shutterstock / GaudiLab

グローバルの強みは他にもある。それはソースグローバル・リサーチ社の「2020年 ソートリーダーシップの質ランキング」で世界No.1を受賞した「リサーチネットワーク」の活用だ。

キャップジェミニは本社があるフランスだけでなく、インドやイギリス、アメリカなど世界9拠点にリサーチ専門部隊を設置。業界別のビジネストレンドや戦略課題に沿ったリサーチ・分析などを行っている。

「IT技術やビジネストレンドは、海外の方が速いスピードで動いています。

最新事例のキャッチアップはもちろん必要ですが、特に重要なのは『失敗例』からの学びです。なぜ上手くいかなかったのかを分析し、どう困難を克服したかといった方法論をキャップジェミニは持っています。グローバルで戦うにはこういった多様な経験・事例が成功のキーポイントとなるのです」(保積氏)

「フラットに話し合って解決」がフランス流

世界中のリソースを最大限に活用し、企業のグローバル化とデジタル化を支援するキャップジェミニ・ジャパン。それを支えるのが多様性を尊重する社風だ。その一端が国際色豊かなオフィスにも見てとれる。

「現在日本の社員数は600名強。半分は日本国籍ですが、残り半分の在籍社員の国籍は20カ国に及びます。そのほとんどがバイリンガル。グローバルでのコラボレーションがしやすい組織を目指しチーム編成を行っています」(保積氏)

個人主義のイメージが強いコンサル業界の中で、社員同士のフラットなコミュニケーションが活発なのも特徴だ。互いの価値観や文化を尊重しつつ、重要なことは「話し合って決める」カルチャーが根付いている。

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キャップジェミニ社紹介資料より。

提供:キャップジェミニ・ジャパン

「創業の地・フランスは、歴史的にも地政学的にも協調性・合理性が重視される国。さまざまな国と接しているので、隣国と上手くやっていく必要がありコラボレーションも活発でした。

キャップジェミニにもその文化は根付いていて、経営層が示した方針をメンバー同士が話し合う場があります。その代わりに決まってからの反対はなし。全員で協力して進めていきます」(保積氏)

こういった姿勢は、キャップジェミニが大事にする7つのコアバリューにも表れている。それは創業の精神でもある「誠実、大胆、信頼、自由、楽しさ、謙虚、チームスピリット」だ。

「我々が掲げる提供価値は、『協業』を通じたビジネス体験です。それは人が互いに信頼し協力することで、単独ではなし得ない価値を一緒に作ること。

一方的にソリューションを提供するのではなく、クライアントが問題を解決するための方法を一緒に模索しながら走っていきます。互いを尊重して切磋琢磨しつつ、協業するという価値観を大切にしているのです」(保積氏)

グローバルに活躍する人材を育て、発展させる使命

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日本進出8年目となるキャップジェミニ・ジャパンは、日本市場の特性を踏まえたさらなる躍進を見据える。

「戦略的なM&Aも行いつつ、規模の拡大を目指しています。特にAIやビッグデータなどデジタル領域に積極的に取り組んでいきます。

規模が小さくてもユニークであれば協業したいし、必要があれば数千人規模の企業でも買収することを視野に入れています」(保積氏)

規模が拡大し専門的なデジタル領域へのチャレンジが加速すれば、それに伴う人材も必要だ。しかし保積氏は「単に専門知識があるだけでは不十分」と語る。

「テクノロジーに精通しているだけではなく、なぜ顧客企業にとってそのテクノロジーが必要なのかを深く考える必要があります。そしてグローバルで活躍するために、多様性を受け入れ、コミュニケーションがしっかりとれることも重要。今後はそういった人材の育成にも注力していきます。

キャプジェミニは世界各国でビジネスを展開しているので、海外案件の機会も積極的に作っていきたいと考えています」(保積氏)

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最後に保積氏は、キャップジェミニの社会的使命として「Architect of Positive Future」という言葉を挙げた。直訳すると「より良い未来の建築家」である。一体どういった世界を目指しているのか。

「事業を通じてクライアントや社会の発展に貢献することはもちろん、企業や組織のあり方への配慮を通じて、社会をより良くしていきたい。

特に多様性とインクルージョンについては、業界のモデルになるべく社内に目標を掲げて女性やマイノリティの雇用、育成、登用に取り組んでいます。

また、デジタル社会がもたらす社会の分断を解消するため、世界中の恵まれない若者に向けたデジタル教育にも積極的に取り組んでいきます。そうして『より良い未来』を形作る存在でありたいと思います」(保積氏)


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