Posted: 21 Apr. 2020 3 min. read

社内起業家「イントレプレナー」がイノベーションを起こす

昨年末、デロイト トーマツ グループでは、グループの全メンバーを対象に新規事業の公募を開始した。デロイトやデジタル、データ、多様性(Diversity)などの可能性を活かせるInnovatorをグループ内から発掘するということで、本企画には「D-nnovator」という名前が付いている。

社内起業家「イントレプレナー」がイノベーションを起こす

私は現在同プロジェクトの推進担当として携わっているが、当社がこのように新規事業の公募を行った背景には、第4次産業革命が加速度をもって進行する中で、我々プロフェッショナル業界も従来のままではいられないという危機感がある。同様に多くの大企業において、新規事業・イノベーションに対する期待がかつてないほど大きくなっている。イノベーションは今や経営の重要課題として捉えられているのである。

 

さて、大企業におけるイノベーションへの土壌は整ってきたが、成功のための条件はなんだろうか。もちろんいろんな要素があるが、多くの企業の取り組みを支援していきた立場から言えることは、起業家精神と社内調整力を併せ持ったイントレプレナー(Intreprenuer;社内起業家)の存在が不可欠ということである。

成功したイノベーションを見てみると、実は「それは素晴らしいアイデアだ!」と言えるものは珍しく、誰もが一度は考えたことがあるような、あるいは何かの焼き直しや二番煎じといった印象を持つようなアイデアであることが多い。しかし、そのアイデアを形にする「実行力」こそが重要であり、多くの日本企業において実現できていない、イノベーションにおける課題なのである。

 

御社内の人材を思い浮かべてもらいたい。既存事業を回すことには長けていても、不確実性の極めて高いゼロからの新規事業立ち上げを、それもスピード感を持って実行できる人材など、社内を見渡してみてもほとんどいないのではないだろうか。また、たとえそういったポテンシャルを持つ社員がいても、大企業の多層・複雑化したステークホルダーのしがらみや調整のハードルにぶつかり、多くの取り組みが苦戦を強いられているのが現実である。

 

コンサルタントとしての肌感では、一から事業を興すよりも、大企業の中で新規事業を担当する方が難しい印象を持っている。しかし、イントレプレナーが見つからないからと言って、新規事業開発を専門とする外部コンサルタントを起用し有望なスタートアップを買収したとしても、そのチームにゼロから創業して事業を拡大させた経験や、いわゆるトラディショナルな大企業の意思決定構造についての深い理解が欠乏しており、うまくいかないケースもやはり多い。また、そもそもスタートアップという異分子を受け入れ、彼らとシナジーを発揮し、人材としても成長させていくことは、神技的に難しい取り組みなのである。

 

イノベーションのための貴重な資源である挑戦者=イントレプレナーが社内でつぶされないようにするために、当社は従来型の新規事業コンサルとはまったく異なる形での新規事業開発支援(=Business produce)をスタートし、成果を挙げている。単なる相談相手やアドバイザーに甘んじるのではなく、「当事者」としてクライアント企業と向き合い、事業責任者の一角を担う人材を出向させてチームを組み、ビジネスを立ち上げているのだ。

 

最後に、イントレプレナーが与える影響はイノベーションだけにとどまらない点に触れておきたい。イントレプレナーとして社内起業を経験した若手トップが大企業を率いるようになれば、まず社内の空気が変わり、世界で勝てる力を生み、それが日本経済の変革につながるのだ。我々は、これまでユニコーン企業が少なかった日本に、メガベンチャーが続々誕生する未来をつくりだしたいと考えている。

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成田 大輔/Daisuke Narita

成田 大輔/Daisuke Narita

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 マネージングディレクター

デロイト トーマツ ベンチャーサポート株式会社 Next Core事業部 事業部長 大手人材系広告代理店、PRコンサル会社、新規事業専門会社/VCを経て、現職。 DTVSにおいては、複数のベンチャー企業の事業開発、グロースアップ支援等に従事しながら、管轄部署にて、MorningPitchをはじめとしたDTVSの自社事業の事業運営と新規事業開発を行っており、主にデジタルサービスを中心とした新規事業・新サービスの開発立ち上げを行っている。